変体仮名標準化へ向けての考え方

 IPAでは、2012年度に、変体仮名標準化検討の素材として字形情報を調達し、以来、その国際標準化へ向けた準備を進めてきました。2013年度からは国立国語研究所との共同により、専門家によるさらなる検討と有識者へのヒアリング、字形情報の修正や追加等を行ってきました。
 検討の結果、戸籍統一文字(平成16年4月1日付け法務省民一第928号(改正平成16年12月6日付け法務省民一第3464号)民事局長通達別冊1・2・3)に収容された変体仮名(168文字)に加え、日本語文字・表記史や日本史学等の分野で必要とされる学術用変体仮名を集字した結果を合わせた、計299文字について、国際標準化へ向けた提案を行う事としました。

本一覧表は、その299文字を示した物です。

 変体仮名は、表音文字の一種であり、元となる漢字(これを字母と呼びます)を崩し、意味を捨象し、「音」のみを伝える文字として作られました。漢字を崩して作られた手書きの文字であるという成り立ちから、崩し方の度合に幅広いバラエティが存在します。
 一般に、文字コード(文字符号)を標準化する場合、その文字の集合は、揺れのない安定したものであることが求められます。しかし、変体仮名における「崩し方」は必ずしも安定した物ではなく、形状のみに基づいて文字を同定し、標準化することは適切ではありません。
 そこで、変体仮名の持つ「音価」つまり、「あ」「い」「う」。。。といった現代平仮名によって表現される「音」と、その変体仮名がどの漢字を字母としているか、つまり「音価」と「字母」との組に注目して符号化を行うこととしました。
 原則、「音価」×「字母」の組一つにつき、一つの変体仮名のみを符号化します。ただし、一部、ある変体仮名の字形(崩し方)が積極的に使い分けられる場合があり、そのような場合には、例外的にひとつの「音価」×「字母」の組について複数の変体仮名を符号化することとしています。
 また、「音価」×「字母」の組に従って整理した結果、同一字母が複数の音価に用いられている場合においては、図形的に同一であっても別な変体仮名としました。
 上述したように、変体仮名には、崩し方に幅広いバラエティがあることから、文字の形状には幅広い許容度があります。したがって、本一覧表に例示した字形は、多様な文献を調査した結果や、専門家による検討から導かれた典型的な形状ではありますが、あくまでも字形の一例であり、字形を強制する物ではありません。
 変体仮名の同定は、「音価」×「字母」の組によってなされることを第一とし、形状の図形的一致度は第二とする、との考え方が、本一覧表作成と、変体仮名の国際標準化へ向けて変体仮名を整理する上での基本的な考え方となっています。
 本一覧表には戸籍統一文字の変体仮名との対応関係を示してありますが、対応する変体仮名の図形的形状が必ずしも同一ではないのはそのためです。